唐・新羅の来襲を想定した巨大な朝鮮式山城
大野城_百閒石垣_01
大野城_百閒石垣_01

目次

大野城の見どころとイベント

大野城_大宰府口城門跡_01
大野城_大宰府口城門跡_01
大野城_主城原礎石群_01
大野城_主城原礎石群_01
大野城_百閒石垣_03
大野城_百閒石垣_03
大野城の最大の見どころは、白村江の戦いを契機に築かれた日本最古級の古代山城としての石塁や土塁の遺構です。
特に四王寺山の山腹に残る壮大な百間石垣は、1400年近い時を超えても、なお堅牢な姿を見せ、訪れる者を圧倒します。
四王寺山の険しい山岳地形をそのまま活用した、巨大な防衛構造にも注目です。
大野城跡は、四天王を祀った四王寺が建てられたことから「四王寺山」とも呼ばれています。
城郭構造は朝鮮式山城に基づく山岳要塞で、土塁・石塁・水門・倉庫などを備えていました。
大野城は福岡県太宰府市と大野城市にまたがる四王寺山に築かれました。
山全体が城そのもので、自然の地形を巧みに活かした構造となっています。
麓には御笠川が流れており、四王寺山の断崖と急斜面が自然の防衛線を作り出しています。
南には奈良時代の官道「筑紫路」が通ります。
近くには大宰府政庁跡や太宰府天満宮、観世音寺などの名所旧跡が点在し、古代日本の政治・軍事の中心に位置していたことがうかがえます。
大野城は唐・新羅の侵攻に備えた国防拠点として築かれたお城です。
663年白村江の戦いで敗れた日本は、外交と軍事の最前線である筑紫の防衛体制の強化を進めます。
はじめに山麓の平地に水城を、その後四王寺山に大野城を築き、敵の侵入を防ぎました。
大野城は山城として太宰府を監視・防衛し、水城とともに古代最大級の国防拠点となりました。
築城には、城の築造に長けた百済の亡命軍人である、憶礼福留と四比福夫が中心となりました。
大宰府政庁ゆかりの人物が関わったとされますが、城主という概念はなく、国家によって管理された要塞でした。
毎年秋には「太宰府古都の光」という市民参加型のイベントが開催されています。
名所旧跡に灯篭や光のオブジェを設置し、提灯を片手に散策しながら地域が照らされ、古代の雰囲気が甦ります。
また「大野城まどかフェスティバル」では地元の郷土芸能やグルメが楽しめ、四王寺山ハイキングや歴史講座なども企画されます。
地域の人々とふれあいながら、大野城の魅力を再発見できるイベントです。

大野城へのアクセス方法

飛行機で行く場合

福岡空港から福岡都市高速を使って車で約30分

▼レンタカーは以下
福岡空港の場合
・ニッポンレンタカー福岡空港店  092-611-0919
・トヨタレンタリース福岡空港店 092-611-0100
・オリックスレンタカー福岡空港店 092-621-0543

新幹線・電車で行く場合

・山陽新幹線:JR博多駅下車
JR博多駅から博多バスターミナルへ徒歩で移動(約1分ほど)
西鉄バス 西鉄太宰府駅行に乗車し、「西鉄太宰府駅」で下車

JR博多駅で「福岡市地下鉄空港線」に乗換、「天神駅」で下車
徒歩で天神大牟田線「西鉄福岡(天神)駅」移動(徒歩3〜5分ほど)
「西鉄福岡(天神)駅」から「西鉄二日市」駅で太宰府線に乗換、「西鉄太宰府駅」で下車

「西鉄太宰府駅」からは、徒歩(50分ほど)または、タクシー(20分ほど)で目指します。

車で行く場合

九州自動車道 太宰府ICより県道60号経由で約10~15分
以下をナビに登録ください。
四王寺焼米ヶ原駐車場
住所:〒811-2105 福岡県糟屋郡宇美町四王寺126

駐車場

四王寺焼米ヶ原 駐車場
住所:〒811-2105 福岡県糟屋郡宇美町四王寺126

四王寺県民の森センター 駐車場
住所:〒811-2105 福岡県糟屋郡宇美町大字四天寺207

大野城、最寄りの場所からのアクセス方法

今回は四王寺焼米ヶ原駐車場で車を止めて、
大宰府城門跡→増長天礎石跡→鏡ヶ池→水城口城門跡→屯水水門→八ツ波礎石群→百閒石垣→北石垣とめぐって四天王寺県民の森センターに戻るコースで紹介いたします。

大野城を散策する

大宰府口城門跡

大野城_大宰府口城門跡_02
大野城_大宰府口城門跡_02
車で山道を登っていくと最初に見えてくるのがこの門跡です。 大野城の南側外郭に設けられた最大規模の門で、太宰府政庁方向から見て城の正門と位置づけられており、その雄姿は当時も一際目立つ存在だったと考えられています。門の西側には谷をふさぐ石塁(水の手口石塁)、右手には焼米ヶ原へ延びる土塁が築かれ、防御と侵入制限に効果を発揮しました。
門は、掘立柱(ほったてばしら)式の簡易構造で、何度か改修され、礎石(そせき)式の瓦葺櫓門(二層構造)へと変わっていったようです。門付近からは、鏡(かがみ)や鋤先(すきさき)など、地鎮用具と見られる小型模造品も出土し、儀礼的側面も示唆されています。

増長天礎石群

大野城_増長天礎石群_01
大野城_増長天礎石群_01
大宰府口城門跡を抜け進むと左手に、整然と並んだ礎石群が見えます。これが、増長天礎石群で、増長天とは、仏教でいう四天王の1尊で、南側を守る神様です。
発掘で柱礎石や出土瓦から、これらの建物は瓦葺の高床式倉庫であり、食料や武器を収める物資庫として使われたと考えられています。
4棟が一直線に整然と並び、隣接する土塁を背にして防御・管理しやすい配置で、物資倉庫として使用され、防人の補給拠点だったと考えられます。

鏡ヶ池

大野城_鏡ヶ池_01
大野城_鏡ヶ池_01
増長天礎石群の裏側すぐにある溜池が鏡ヶ池です。湧水をためたもので、池の水面が鏡のように光り輝く様子から命名されたと考えられています。また、「雨乞い」の儀式に用いられたとの伝承があり、池に鏡を投げ入れたり、水底から鏡を取り出して祈ったとの言い伝えもあります。
宗教儀礼や呪術的行為の場としても機能した可能性がありますが、実用的には、増長天礎石上に建てられた物資倉庫内の武具を洗ったり、防御拠点の籠城用の水源にしたのではないかと考えられています。

水城口城門跡

大野城_水城口城門跡_01
大野城_水城口城門跡_01
鏡ヶ池を後にして四王寺県民の森センターを超えて左側の道を進むと毘沙門堂と土塁に到着します。これを土塁沿いに左にに進めば、水城口城門です。
水城口城門は、大野城と水城(太宰府前面の防御施設)を結ぶ交通路上に設置され、城の防御の一翼を担っていた門です。大宰府口城門などと同様、外来者や侵入者を制御する関所的な役割を果たしていました。又、有事の際にはこの門を通じて、山麓側と城内、さらには水城との間で人員や物資の移動が行われる重要な補給路および連絡路でした。

屯水水門

大野城_屯水水門_01
大野城_屯水水門_01
いったん毘沙門堂に戻るとすぐ右側に屯水水門(とんすいすいもん)があります。
屯水水門は大野城跡に現存する唯一の暗渠式水門で、防御構造と排水設備を兼ね備えた重要な遺構です。
城山の谷部には沢が刻まれ、雨水や湧水の流入によって斜面が浸食されやすいため、暗渠構造を設けて城内を通過させることで、土塁や石塁の崩壊を防ぐ機能がありました。又、排水溝が見つかるとそこから攻撃されて突き崩される危険性があるので、城壁(石垣)の中に巧みに組み込まれた水門として外部から見えにくくしてあります。

八ツ波礎石群

大野城_八ツ波礎石群_01
大野城_八ツ波礎石群_01
屯水水門から県民の森センターに向かって戻る途中左側にある礎石群が八ツ波礎石群です。 四王寺山南西側、林道沿いの緩斜面に段状造成され、尾根から少し離れた谷部寄りの平地に広がる大規模倉庫群です。増長天礎石群が4棟だったのに対し、八ツ波礎石群が14棟の建物があったことからその規模の大きさが窺えます。
水城口・太宰府口門に近接する増長天群とは異なり、八ツ波はより中央寄りかつ明るい位置にあり、生活物資や食糧など、比較的日常的な備蓄倉庫の役割が強く意識されていたと考えられます。

百閒石垣

大野城_百閒石垣_02
大野城_百閒石垣_02
八ツ波礎石群を左に見ながらまっすぐ北に向かうと百閒石垣です。
百閒石垣は大野城跡最大の石垣で、全長約180 mにわたり、基底幅約9 m・高さ最大約8 mに達する急傾斜(外壁74~80°)の石塁です。尾根と谷を塞ぎ、山腹を囲む城壁の一部として機能しました。石垣のある城北部は、遠賀川から遡上してくるであろう大規模な敵軍(唐・新羅連合軍)を跳ね返すための重要な箇所で、通常の版土で固めた壁ではなく、岩盤上に小~大型の長方形花崗岩を縦横に積み、「総石垣」と呼ばれる構造形式で、内部にも石材が詰められて非常に頑丈な構造になっています。又、石垣の底部や内部には意図的に隙間を残されていて、雨水や谷水の自然排出を促す「浸透式水門」としても機能しています。

北石垣

大野城_北石垣_01
大野城_北石垣_01
百閒石垣の右側に北石垣と城口跡があります。
北石垣は、土塁の地形補強と小規模ながら優れた防御機能(懸門)を兼ねた貼石垣で、階段状盛土と扉の軸受金具によって工夫された構造です。
百間石垣が城全体を守るための強固な総石垣の城壁だったのに対し、北石垣は、補強・制御のための部分石垣だったと考えられます。石垣右側には城口跡もあり、扉の回転軸を支えて、回転しやすくする軸受金具(今の時代のベアリングのようなもの)なども発見されています。

大野城の御城印と百名城スタンプ

大野城の御城印

大野城の御城印は以下の場所で購入できます。
宇美町立歴史民俗資料館
住所:〒811-2101福岡県糟屋郡宇美町宇美1丁目1-22
営業時間:8:30~17:00(入館は16:45まで)
休業日:月曜日(祝日の場合は翌平日。宇美八幡宮祭礼日と重なる場合は順延)、年末年始
販売金額:300円

大野城の日本百名城スタンプ

大野城の日本百名城スタンプは以下で押せます。
四王寺県民の森 管理事務所
住所:〒811-2105福岡県糟屋郡宇美町大字四王寺207
営業時間:4月~9月 9:00~18:00 10月~3月 9:00~17:00
休業日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始

大宰府展示館
住所:〒818-0132太宰府市観世音寺四丁目6番1号 
営業時間: 9:00~16:30
休業日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始

太宰府市文化ふれあい館
住所:〒818-0132福岡県太宰府市国分四丁目9番1号
営業時間: 9:00~17:00
休業日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始

宇美町立歴史民俗資料館
住所:〒811-2101福岡県糟屋郡宇美町宇美1丁目1-22
営業時間: 8:00~17:00(入館は16:45まで)
休業日:月曜日(祝日の場合は翌平日。宇美八幡宮祭礼日と重なる場合は順延)、年末年始

大野城心のふるさと館 3階ふるさとラボ カウンター
住所:〒816-0934 福岡県大野城市曙町3丁目8-3
営業時間:9:00~17:00(ふるさとラボは18:00まで)
休業日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始

大野城市役所 新館3階 行政資料室
住所:〒816-0934 福岡県大野城市曙町2丁目2-1
営業時間:8:30~17:00
休業日:土曜日、日曜日、祝日、年末年始

大野城市総合体育館
住所:〒816-0902 福岡県大野城市大字乙金618-12
営業時間:9:00~21:00
休業日:第3木曜日、年末年始

大野城の入城情報

所在地

〒811-2105 福岡県糟屋郡宇美町四王寺

開城時間

大野城
24時間OK

四王寺県民の森センター
4月~9月 9:00~18:00
10月~3月 9:00~17:00

休城日

大野城
年中無休

四王寺県民の森センター
月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始

料金

大野城跡
無料

四王寺県民の森センター
無料

製作スタッフ紹介

記事担当

倉の丞
倉の丞
歴史作家。城郭ナビゲーター。
城巡り歴は約40年ほど。防衛施設としての城もさることながら城下町としての街づくりが好き。
特に江戸時代の教育・文化・経済に強く惹かれています。
日本100名城、日本続100名城を中心に訪れたお城の数は150城を超え、2025年に200城を目指し日夜研鑽中。
現在、城トリップで仲間たちと城巡りの情報交換を行いながら記事更新しています。